はじめまして!
編集者プロフィール
このブログの編集者、岩藤正宏です。私は株式会社イワショウの代表を務め、創業50年の歴史を持つ当社で長年外壁塗装・屋根塗装の業務に携わってきました。建築業界での経験は30年以上、2級建築士、1級建築塗装技能士、外壁診断士、雨漏り診断士など、15の資格を活かして日々の仕事に取り組んでいます。
はじめに
近年、住宅の外装リフォーム業界では「タスペーサー(タスペーサー工法)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。タスペーサーはスレート屋根の塗装工事と深い関わりがあり、特に雨漏り対策や屋根の長寿命化において大きな効果を発揮すると注目されています。しかし、その名称や取り付け方はまだ一般の方にはなじみが薄いかもしれません。そこで本記事では、タスペーサーとは何か、どのような原理で雨漏り対策に役立つのか、そしてスレート屋根塗装でどのように活用するのかといったことを徹底的に掘り下げ、10,000文字程度の大ボリュームで解説していきます。これから屋根のメンテナンスをご検討される方も、すでに塗装工事の依頼を検討している方も、ぜひ最後までご覧いただき、正しい知識を身につけていただければ幸いです。
第1章:スレート屋根の基礎知識
まずはタスペーサーのお話に入る前に、スレート屋根そのものの特徴や役割、そして一般的なスレート屋根のリフォーム事情について確認しておきましょう。なぜなら、タスペーサーが主に用いられるのはスレート屋根(化粧スレート屋根)であり、その構造や特性を理解することでタスペーサーの必要性がより明確になるからです。
1-1. スレート屋根とは?
「スレート」と聞くと、天然石のスレート(粘板岩)を想像される方も多いかもしれません。しかし、現在一般的に住宅の屋根に使用されている「スレート」は、セメントや繊維を主原料とした「化粧スレート」と呼ばれる人工の屋根材を指します。いわゆる「カラーベスト」や「コロニアル」などの商品名で有名ですね。
この化粧スレートは薄型で軽量かつ比較的安価であるため、新築やリフォームで多く採用されています。また、多彩なデザインやカラーバリエーションが豊富で、家の外観を整える上でも人気が高いのが特徴です。日本の住宅市場では、瓦屋根に次いで多くのシェアを獲得しており、戸建て住宅の屋根材としてはスタンダードといえるでしょう。
1-2. スレート屋根のメリットとデメリット
スレート屋根には以下のようなメリットとデメリットがあります。
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メリット
- 軽量:日本は地震が多い国ですから、屋根材の重量は耐震性能にも直結します。その点、スレートは比較的軽い素材で、住宅の構造に負担をかけにくいというのは大きな長所です。
- 施工性の高さ:薄く、割と扱いやすいこともあり、比較的短期間で施工しやすい屋根材として定評があります。
- 意匠性の豊富さ:スレート屋根は商品によってさまざまな色柄が展開されており、家の雰囲気に合わせやすいという魅力があります。
- コストパフォーマンス:陶器瓦などと比べると、素材の単価が安い傾向にあり、初期コストを抑えやすいのもメリットの一つです。
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デメリット
- 劣化が進むと割れやすい:化粧スレートは経年劣化によって反りやひび割れが起きやすくなります。そのため定期的な点検やメンテナンスが必要です。
- 塗膜の剥がれ:スレート屋根の防水機能は主に塗膜によって確保されています。そのため、定期的に塗装を施さないと防水性能が低下し、雨漏りのリスクが高まることがあります。
- メンテナンスサイクルが短め:瓦などと比較すると寿命自体は短く、定期的に塗装メンテナンスをすることが前提となります。
1-3. スレート屋根のリフォーム事情
通常、スレート屋根は10年ほど経過すると、徐々に塗膜の劣化やスレート自体の反り・欠けといった問題が発生しやすくなります。住宅会社や塗装業者でも「10年目くらいには一度、屋根の塗り替えを検討した方が良いですよ」とアドバイスされるケースが多いです。
しかし、塗装工事をする際に忘れてはならないのが、適切な下地処理や部材(タスペーサーなど)の選定です。特にスレート屋根は、塗り方や材料の使い方によっては毛細管現象が起こりやすく、雨水が入り込み雨漏りの原因になり得ます。そこで「縁切り工法」や「タスペーサー工法」が注目されているのです。
第2章:雨漏りの原因と対策
雨漏りは住宅トラブルの中でも深刻度が高く、室内環境を悪化させるばかりでなく、構造材の腐朽やシロアリ発生といった二次被害を招く可能性があります。ここでは、スレート屋根で生じやすい雨漏りの原因と、その対策の基本的な考え方を整理しておきましょう。
2-1. スレート屋根特有の雨漏り原因
スレート屋根の雨漏りには、以下のような原因が多く挙げられます。
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スレートの割れや欠け
経年劣化や飛来物による衝撃でスレート材が割れたり欠けたりすると、そこから雨水が侵入しやすくなります。 -
棟板金の浮きや釘抜け
スレート屋根の頂上部に取り付けられる棟板金(むねばんきん)は、屋根の収まりを美しく見せるだけでなく防水の役割も果たしています。固定する釘が緩んだり抜けたりすると、隙間から雨水が侵入します。 -
塗膜の劣化
スレート表面の防水塗膜が紫外線や雨風により劣化すると、素材自体が水分を吸い込むようになり、そこから雨漏りへ発展する可能性があります。 -
縁切り不良による毛細管現象
塗り替えの際に、スレート同士の隙間が塗料で埋まってしまうと、板同士が密着し、雨水がわずかな隙間から内部に吸い込まれやすくなることがあります。これが毛細管現象による雨漏りで、タスペーサー導入の重要性はこの項目が大きく関わってきます。
2-2. 雨漏りを放置するとどうなるか?
雨漏りを放置すると、家屋全体にさまざまな悪影響を及ぼします。例えば以下のような被害が想定されます。
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室内のカビ発生
天井や壁の内部が湿気を帯び、カビが発生しやすくなります。カビはアレルギーや喘息などの健康被害を引き起こす原因にもなります。 -
木部の腐朽やシロアリ被害
雨水が長期間にわたって木材に浸透すると、腐朽菌やシロアリの活動が活発になり、住宅の耐久性が著しく低下します。 -
内部結露の誘発
屋根内部に水が染み込むことで、断熱材や下地材が湿り、冬場などには内部結露が発生する可能性があります。結果として断熱性能が下がり、光熱費がかさむ一因となることもあります。 -
補修費用の高騰
雨漏り被害を大規模に修繕しなければならなくなると、屋根だけでなく内装や構造の修理費がかさみ、結果としてコストも大きく跳ね上がる可能性があります。
2-3. 雨漏り対策の基本
スレート屋根の雨漏り対策としては、定期的な点検・メンテナンスが最も重要です。割れや欠けのチェックや、棟板金の浮きや釘の抜け、シーリングの切れなどを早期に発見して対処することで、大きなトラブルに発展することを防げます。
そして塗り替え工事においては、縁切りまたはタスペーサーの取り付けが必須とされる場合が増えてきました。特に、タスペーサーは効率的かつ確実にスレートの隙間を確保できるため、多くの施工業者でも積極的に導入されています。
第3章:タスペーサーとは?
ここからいよいよタスペーサーについて具体的に見ていきましょう。タスペーサーは一体どのようなものなのでしょうか?
3-1. タスペーサーの概要
タスペーサーとは、スレートとスレートの間に隙間を作り出すための専用部材です。塗装工事の最中、あるいは塗膜が完全に乾ききる前に挿入することで、スレート屋根の板同士が塗料で密着してしまわないようにし、適切な通気・排水を確保します。
かつては、塗装後にスレート同士がくっついてしまわないように、カッターやヘラを用いて手作業で「縁切り」を行うのが一般的でした。しかし、「縁切り」作業は手間がかかる上に、施工者の技術と労力に左右されやすいという欠点がありました。そこにタスペーサーを用いることで、確実な隙間を自動的に形成できるようになり、雨漏りリスクを効率的に低減させられるようになったのです。
3-2. タスペーサーの形状と種類
タスペーサーは、多くの場合プラスチック製で、差し込みやすい形状をしています。屋根材の種類や施工方法によっては、厚みや形状に多少のバリエーションがありますが、基本的にはスレート同士が適切に浮くように設計されています。
メーカーによって名称やデザインが若干異なる場合がありますが、「タスペーサー」「タスペーサーⅡ」「タスペーサーエコ」などのラインナップがあり、いずれも同様の原理で隙間を確保します。近年では改良が進んでおり、軽量化や差し込みやすさの工夫がされています。
3-3. タスペーサー工法のメリット
タスペーサーを導入することで得られるメリットは大きく分けて以下の通りです。
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確実な縁切り
従来のカッターを使った手動の縁切りと比較して、タスペーサーは一定の間隔と隙間を作り出しやすいので、確実かつ均一な縁切りが期待できます。 -
作業時間の短縮
手作業で1枚1枚スレートの隙間を切り離していく作業は非常に手間がかかるものでした。一方、タスペーサーを使えば塗装作業の途中あるいは仕上げの段階で差し込むだけなので、全体の施工時間を短縮しやすくなります。 -
コストパフォーマンス
タスペーサー自体はそれほど高価な部材ではなく、大規模な屋根でも通常数千個~1万個程度使用するにしても、取り付け作業を省力化できるため、トータルコストが抑えられる可能性があります。 -
雨仕舞(あまじまい)の向上
タスペーサー工法によって形成される隙間は、水の通り道と同時に空気の流れも生み出します。これによって水が溜まるのを防ぐと同時に湿気や熱がこもるのを抑える効果も期待されます。
第4章:なぜタスペーサーが必要なのか?
ここでは、なぜタスペーサーが雨漏り対策として有効なのか、もう少し踏み込んだ視点から解説します。
4-1. 毛細管現象の脅威
スレート屋根は、薄い板状のスレートを重ねているため、どうしても隙間が多くなります。本来であれば、その隙間から余分な水分が排出されるのが理想です。しかし、塗装の際にスレートの端同士が塗膜で「くっついて」しまうと、わずかな隙間が水を吸い上げる毛細管現象を引き起こします。
毛細管現象の怖いところは、スレート表面に大きな穴が開いていなくても、見た目にはほとんど分からないわずかな隙間でも水が屋根の内部にじわじわと吸い込まれてしまう点です。これは自然の力であり、塗膜がきれいに塗られていても、スレート自体が呼吸しようとする性質から生じる問題でもあります。
4-2. 適切な排水と通気
タスペーサーを入れることで、スレート同士の「縁」を確実に切り離し、そこに適度な隙間を保つことができます。この隙間があると、雨水や結露による水分が溜まらずに排出されやすくなり、同時に通気も確保されるため、屋根下地の乾燥を促進します。
スレート屋根は基本的に勾配(傾斜)があるため、水は重力によって下方向へ流れます。隙間が無い(あるいは小さすぎる)状態だと、水の逃げ道がなくなり、逆に内部へ浸透する要因が増えるわけです。タスペーサーを用いて意図的に**逃げ道(排水路)**を作ることは、雨仕舞いの観点で非常に重要となります。
4-3. 屋根全体の寿命延伸
雨漏りが発生すると、屋根の下地材や構造材がダメージを負うだけではなく、内部に湿気がこもりやすくなります。湿気は木材の腐朽を早め、建物の耐久性を大きく低下させる原因になります。タスペーサーで適切な排水・通気を確保することは、屋根を含む建物全体の寿命延伸にもつながるのです。
第5章:タスペーサーの正しい取り付け方法
タスペーサー工法を成功させるためには、正しい取り付け手順やポイントを守ることが重要です。施工の流れをざっくりと確認してみましょう。
5-1. 事前準備
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屋根の洗浄と下地処理
まずは高圧洗浄などを行い、スレート表面に付着した汚れやコケ、古い塗膜の浮きなどをしっかりと落とします。下地処理を怠ると、せっかく塗装してもすぐに剥がれたり、十分な防水性能を発揮しなかったりします。 -
傷や破損の点検・補修
割れたスレートや棟板金の釘抜けなどがあれば、塗装に入る前に修復しておきます。タスペーサーを導入しても、板自体が割れたままでは雨漏りは防げません。
5-2. 塗装工程とタスペーサー挿入
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下塗り(プライマー)
スレート屋根専用の下塗り材(プライマー)を塗布し、スレートと塗料の密着性を高めます。 -
中塗り(主剤1回目)
上塗り材(主剤)の1回目を塗布します。この時点でタスペーサーを挿入するケースが多いですが、施工店によっては中塗りと上塗りの合間に行う場合もあります。 -
タスペーサー挿入
中塗りがある程度乾いた段階で、スレートの重なり部分にタスペーサーを差し込んでいきます。屋根全体にバランスよく挿入する必要があり、一般的には1枚のスレートにつき左右2箇所など、メーカー推奨の挿入方法があります。 -
上塗り(主剤2回目)
タスペーサーの位置がしっかりと調整されているのを確認した後、最終的な仕上げの上塗りを行います。塗りムラが起きないように均一に塗装し、きちんと乾燥させます。
5-3. 施工の注意点
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挿入しすぎに注意
タスペーサーをスレートの隙間に差し込む際、無理に奥まで押し込みすぎると、板を破損するリスクがあります。ちょうどよい位置でストッパーがかかるよう、力加減を見極めることが大切です。 -
枚数・配置を守る
メーカーや施工店が指定する挿入枚数や配置間隔を守ることが重要です。不均一な配置だと排水効率が悪くなる場合があります。 -
雨天の作業を避ける
屋根塗装全般に言えることですが、塗料が乾ききらない状態で雨が降ると品質に影響が出ます。できるだけ天気予報を確認し、晴れや曇りの日を狙って一気に仕上げるのが理想です。
第6章:塗装とタスペーサーの関係
ここでは、スレート屋根塗装とタスペーサー工法の関係性、そして近年注目を集めている理由についてさらに詳しく解説します。
6-1. 従来の縁切り工法との比較
先述の通り、かつてはスレート屋根の塗り替え時に、ヘラやカッターで縁切りを行うのが一般的でした。この方法は施工者の熟練度によって仕上がりにバラつきが出やすく、作業時間も長くかかるデメリットがありました。
一方、タスペーサー工法では、差し込むだけで縁切りが完了するため、確実性・効率性が格段に上がります。熟練度に左右されにくく、雨漏りリスクを大きく軽減できることから、多くの施工業者が主流の方法として採用するようになりました。
6-2. なぜタスペーサーが「新常識」なのか?
スレート屋根の塗装工事においては、屋根材の防水性能を回復させるだけでなく、その後のメンテナンスリスクをどう抑えるかが重要なポイントです。タスペーサーを使うことで、塗装後に「縁切りのやり忘れ」や「縁切り不足」からくる雨漏り被害が大幅に減少します。このため、近年の建築・リフォーム業界においては、**「スレート屋根の塗り替えをするなら、タスペーサーが必須」**という認識が急速に広がっています。
また、ホームインスペクションや建築検査の普及により、屋根塗装工事の品質がチェックされる機会も増えています。その際、タスペーサーの施工がきちんと行われているかが判断基準の一つにもなり、住宅の売買や査定においてもプラス評価となるケースが見受けられます。
6-3. タスペーサーと併用したい工法
タスペーサーでスレート同士の隙間を確保するだけでなく、以下のような工法や材料を併用することで、より高い雨漏り対策・屋根性能の向上が期待できます。
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下地補修材の使用
ひび割れスレートや棟板金の釘抜け部分を、専用の補修材やシーリングで補強しておくと、雨漏りリスクが大幅に低減されます。 -
高耐久塗料の導入
フッ素系や無機塗料といった高耐久塗料を使うと、再塗装までの期間を延ばすことが可能です。タスペーサーとの相性も良好なため、長い目で見るとメンテナンスコストの削減につながります。 -
遮熱・断熱効果のある塗料
夏場の室内温度上昇を抑え、エアコン代を節約できる遮熱塗料や断熱塗料を選ぶのも一案です。タスペーサーで通気を確保することで、さらに快適な屋根環境を作り出せるでしょう。
第7章:実際の施工例と注意点
ここでは、タスペーサー工法を実際に採用した施工例を踏まえながら、注意点やよくあるトラブルについて確認していきます。
7-1. 施工例:20年経過したスレート屋根の塗り替え
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施工前
築20年を経過したスレート屋根で、表面の色あせやコケが目立ち、防水性能の低下が懸念されていました。棟板金の釘抜けや、数カ所のスレート割れも見つかり、雨漏りの一歩手前の状態でした。 -
施工内容
- 高圧洗浄
コケや汚れを丁寧に除去。 - 破損スレートの差し替え・棟板金の釘打ち直し
雨漏りの発生を予防。 - 下塗り → 中塗り → タスペーサー挿入 → 上塗り
合計3度塗りで仕上げ、防水性を高めた。
- 高圧洗浄
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施工後
タスペーサーでスレートの隙間が確保されたため、水はけが良くなり、今後の雨漏りリスクを減らすことができました。仕上がりも美しく、屋根の耐久性向上が期待できます。
7-2. よくあるトラブルと対処法
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施工後にタスペーサーが抜け落ちる
差し込みが浅かったり、もともとのスレートの重なりが薄くてフィットしづらい場合、施工後にタスペーサーが抜け落ちてしまうことがあります。あらかじめスレートの状態を把握しておき、適切な位置と力加減で挿入することが大切です。 -
タスペーサーが斜めに入って隙間が十分に確保できない
無理な角度で差し込むとタスペーサーの一部が屋根の表面に干渉し、狙い通りの隙間が確保できない場合があります。施工業者には、正しい挿入方法を習熟してもらうことが重要です。 -
タスペーサー部分の塗膜が割れる
塗料の乾燥前にタスペーサーを挿入する際、力をかけすぎると塗膜にひびが入る可能性があります。塗膜は乾燥が進むにつれ硬くなるので、適度なタイミングを見計らうのが理想です。
第8章:DIYでのタスペーサー取り付けは可能?
屋根塗装をDIYで行う方もいらっしゃいますが、タスペーサー工法は繊細な作業を伴うこと、そして高所作業に伴う危険性を考慮すると、基本的にはプロに任せるのが安心です。ここでは、DIYを検討する際の注意点を簡単にまとめます。
8-1. 高所作業のリスク
屋根上は平地とは違って足場が不安定で、転落事故の危険性があります。専門業者は足場を組んだり、安全装備を整えた上で作業を行うため、安全性が確保されていますが、DIYの場合はこの点が大きなリスクとなります。
8-2. 施工不良によるデメリット
DIYで施工した場合、たとえタスペーサーを挿入したとしても、誤った位置や枚数であれば期待通りの効果が得られないか、逆に雨漏りを引き起こす原因になることも考えられます。さらに、屋根塗装全般が難しいため、下塗りや中塗り、上塗りの工程をきちんと踏まないと塗装不良を起こすリスクが高いです。
8-3. 業者選びのポイント
DIYに挑戦するよりも、実績と知識のある専門業者を選び、正しい手順でタスペーサーを取り付けてもらうのがベストです。業者選びの際は以下の点をチェックしましょう。
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タスペーサー工法の経験・実績があるか
施工実績や写真、口コミなどを確認します。 -
保証内容の確認
工事後どのくらいの保証があるか、雨漏りが発生した場合の対処はどうするかといった点を確認します。 -
明確な見積もりと説明
どの塗料を使って、どのような工程で施工するのか、タスペーサーの挿入枚数など、事前に具体的な説明があるかどうかを確認しましょう。
第9章:タスペーサー工法のQ&A
ここでは、一般の方からよく寄せられる疑問点をQ&A形式でまとめています。
Q1. タスペーサーはどのくらいの耐久性があるの?
A. タスペーサーはプラスチック樹脂製のため、極端な高温や経年劣化で多少の劣化はあります。しかし、通常の使用環境下では屋根の寿命と同程度、またはそれ以上の耐久性が期待できます。屋根材に合わせた製品選びや適切な施工で、長期間問題なく機能するケースがほとんどです。
Q2. 既に塗り替え済みの屋根でもタスペーサーを後付けできる?
A. すでに塗装が終わって時間が経過した屋根の場合、塗膜が完全に硬化しているため後付けは難しい場合が多いです。後付けできるケースもありますが、スレートを傷つけるリスクが高くなるため、基本的には再塗装のタイミングでタスペーサーを導入するのがベストです。
Q3. タスペーサーが挿入されているかどうか、素人が屋根に上がらずに確認する方法は?
A. 正直なところ、地上から見ただけでは確認が難しいです。どうしても気になる場合は、ドローン撮影や専門業者に点検依頼をする方法があります。業者に依頼すれば、画像や動画で施工の状態を確認できるでしょう。
Q4. タスペーサーはどんな屋根にも使えるの?
A. 主にスレート屋根に用いられます。金属屋根や瓦屋根など、構造が異なる屋根にはタスペーサー工法は適用できません。屋根材や施工方法に応じて適切な部材を選ぶ必要があります。
Q5. タスペーサーの工事費用はどれくらいかかる?
A. 一般的な30坪前後の住宅屋根の場合、タスペーサー自体は数千~1万円程度の材料費になることが多いです。施工費用に関しては、塗装工事に含まれる場合が多く、合計の塗装工事費が約60~100万円程度(屋根・外壁併せて)かかるケースが一般的ですが、地域や業者によって大きく変動します。
第10章:まとめ 〜タスペーサーが握る雨漏り対策の新常識〜
長々とタスペーサー工法やスレート屋根のメンテナンスについて解説してきましたが、本記事の重要ポイントを振り返ります。
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スレート屋根は定期的な塗装が必要
化粧スレート屋根は10年前後で塗膜が劣化し、防水性能が低下します。雨漏りリスクを回避するには、早めの点検と塗り替えが欠かせません。 -
雨漏りの多くは毛細管現象が関係している
スレートの隙間が塗膜で埋まると、わずかな隙間から水が吸い込まれやすくなります。これは見落としがちですが、大きな雨漏りトラブルに発展する可能性があります。 -
タスペーサーは確実・効率的な縁切りを実現
従来の手動縁切りよりも作業が早く、均一で確実な隙間を確保できるのがタスペーサー工法です。結果的に雨水の排水性と屋根下の通気性を高め、雨漏りリスクを大幅に低減できます。 -
施工はプロに任せるのが基本
高所作業の危険や、誤った施工による不具合を考慮すると、経験豊富な業者に依頼するのが安心です。見積もり時にはタスペーサーの導入をしっかり確認し、その必要性や施工内容を詳しく聞きましょう。 -
定期的な点検が建物寿命を伸ばす
タスペーサーを取り付けることで雨漏りリスクを下げられますが、完全にゼロにはなりません。屋根材自体の劣化や台風などの自然災害も考慮し、数年ごとに点検とメンテナンスを行うことで、建物の寿命を延ばせます。
おわりに
スレート屋根の塗装工事は、建物の外観を美しく保つだけでなく、防水や断熱など、住環境の快適性や建物の耐久性にも直結する重要なメンテナンス作業です。その中で、「タスペーサー」は雨漏り対策の要となる存在として注目されており、もはやスレート屋根塗装の「新常識」と言っても過言ではありません。
一方で、タスペーサー工法を知っている施工店とそうでない施工店では、雨仕舞いの考え方や仕上がりのクオリティに大きな差が出る可能性があります。これから屋根の塗り替えを検討するのであれば、必ず業者に「タスペーサーは入れてもらえますか?」と確認してみてください。そして、どのような塗料を使用し、どのような工程で施工していくのかも丁寧に説明を受けるようにしましょう。
本ブログ記事が、皆さんのスレート屋根に関する知識と、タスペーサーの必要性・有効性を理解する一助となれば幸いです。雨漏りは住宅にとって深刻なダメージを与えますが、適切な部材を用い、正しい施工を行うことで未然に防ぐことができます。大切な住まいを長く快適に保つためにも、ぜひタスペーサーという「新常識」を活用して、しっかりと雨漏り対策を行ってください。
今後、屋根リフォームや外装塗装を検討されている方は、この機会に施工業者とよく相談して、タスペーサーを含めた総合的なプランを立てることをおすすめします。費用対効果やメンテナンスサイクルを考慮しながら、最適な塗料や工法を選べば、結果的に長期的なコスト削減にもつながります。
「タスペーサーが握る雨漏り対策!スレート屋根塗装の新常識」
このフレーズの通り、タスペーサーを導入したスレート屋根の塗装工事は、雨漏り防止や屋根寿命の延命に大きく貢献してくれます。屋根塗装は高額でありながら、普段あまり目にしない場所だからこそ、細部まで配慮した施工が不可欠です。本記事で得た知識を役立てていただき、皆さんがより安心・安全な住まいを築いていただければ幸いです。今後とも、快適な住環境づくりのために、正しい情報を取り入れながら上手にメンテナンスをしていきましょう。
株式会社イワショウは岡山市北区、南区、中区、東区、赤磐市、瀬戸内市、備前市などを中心に